RA272

高校時代の友人を誘って、新橋のタミヤ模型を訪れたのは、去年の冬だった。店内にはホンダが最初にF1に参戦した時の歴史ある車が飾られていた。高校時代から自動車レース好きだった小峰くんは、この車の事も良く知っていて、その歴史的意義、技術的な工夫などについて、熱く語ってくれた。人が好きな物について語るのを聞くのは、実に楽しいものである。

だから、何を買って帰ろうか、と思った時、自然とこの車になった。思い入れというのは、そういうものである。タミヤ模型の青と赤の鮮やかな星の入った袋を置いて飲み屋で飲んでいたら、知らないおじさんから話し掛けられたのもいい思い出である。

RA272、という。本物は白地に日の丸の日本国旗デザインなのだが、組み立てるだけでほぼその色が出来てしまうので、塗装をする意味がほぼない。それでは、塗装が好きな僕にはちょっと物足りない。だから、遠慮なく好きな色に塗らせて貰う事にした。レースカーといえば、やっぱり赤でしょ!

白い無垢なプラスチックに、エアブラシでこの鮮やかな赤紫がふわっと立ち上がった時の興奮を思い出す。さっと組み立てるつもりがだいぶ時間が掛かってしまったが、先日、無事完成に至った。

当時、二輪車で有名だったホンダが、その二輪車の技術を使って、高回転動作する小さなピストンを12個並べてF1の制限にぴったりのエンジンを作った。高回転なので、高速時の馬力はすごい。しかし、電子制御がない時代に、12個のピストンをスムースに協調動作させるのは、ピアノの調律をするような綱渡りであったに違いない。そして、低回転では力が出ないので、運転するドライバーも非常に高度な技術が要求される。

当時、ヨーロッパの老舗が席巻するF1で、敗戦国日本のホンダが優勝する。Made in Japanは安いぼろい車の代名詞ではないのだぞ、というのを世界に見せつける。そこに、ホンダの誇りを感じるのである。この車が日本勢初の勝利を飾ったというニュースが届いたとき、本田宗一郎は泣いたという。この車の勝利は、ホンダが四輪車のメーカーとして地位を築くにあたっての大事なマイルストーンにもなっている。

プラモデルでは、このエンジンが見えるようにと、わざわざ車体の一部が透明になっているので、V12エンジンに敬意を表して、透明のまま残した。エンジンの前に運転席を付けたらこうなりますよ、という素朴な設計が目に見える。そして、そこから逆に、今のF1の車は、とても高度な技術を使って設計されているのだろうな、という事が想像される。そんな今の車のプラモデルも作ってみたいなと思うのだが、現代のF1は空力デザインが機密の塊すぎて、プラモデル化されるのも一苦労らしい。残念だ。

自分の手で作りながら、かつての技術者達の誇りや、日本の復興の歴史の一ページに触れてしまう喜び。プラモデルならではである。

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