広目天

日本に行く度に、秋葉原のヨドバシカメラを訪れる事にしている。巨大なプラモデル売り場があるからだ。棚をじっくり眺め、僕の心に話しかけてくるプラモデルを買って帰る。思いもしなかったプラモデルとの出会い。

先日行った時に目に止まったのが、四天王の仏像だった。それほど仏像に興味があるわけでもないが、長く守り継がれているものにはその良さがあるはずだ。そもそも、こんなプラモもあるのかと思った。こんな機会でもなければ作りはしまい。買って帰った。

フィギュアをやってみたいなという気持ちもあった。なにしろ、フィギュアというのは模型の一大ジャンルだ。アニメの登場人物などを立体化するのが主流だと思うが、あまり興味が持てないでいた。美少女フィギュアなど家で作っていたら、それこそ家族に白い目で見られてしまうことは間違いない。しかし、仏像ならば。

組み立ててみると、僕の大きな手にすっぽり入ってしまうくらいの小ぢんまりとした大きさである。しかし、ディテールがみっしりと入った立体感あふれるデザインになっている。組み立てて色を塗る過程で、色々な角度から手に持ち、しみじみ眺めることになる。胸板の厚さ、太ももの太さ、力強く見下ろす憤怒の表情、雄々しく立つポーズ、非常に男らしい。カッコいい。

調べてみると、原型になっているのは興福寺の四天王だという。国宝。鎌倉時代の運慶の作だと言われているらしい。

この美しさを言葉に表現しようと思うが、どうにも言葉にならず、ただただ涙を流すばかりである。800年の時を超えた手紙を受け取った気持ち。外見こそ色褪せ、時の流れを感じさせはするが、その造形の美しさは当時のままである。技芸を極めるとはこういう事か。これだけの超えてなお心をこんなに揺り動かされるとは。

ぜひ皆さんも作ってみてほしい。作ることでしか得られない体験というのは、間違いなくある。

とりあえず説明書通りに塗装したのだが、単調な色合いになってしまった。実物の時を経て色あせた風合いとは比べるべくもない。塗る前に実物の写真を集めてよく観察すべきであったが、後の祭りだ。 もう一つ作らなねば、なるまい。幸い四天王なので、あと3つある。

インドで見た仏像達の、原色の鮮やかな色合いで塗ってみたいと思っている。マーベルのスーパーヒーローのような出で立ちで。四天王というのはそんな存在だったはずだ。仏様を守るスーパーヒーロー。 今からとても楽しみだ。頼むから売り切れないでくれ。

Virūpākṣa 広目天 (1:15ish)

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