Outer Wilds

思い立ってPS5を買い、同僚にゲームをお勧めしてもらった。幾つか教えて貰ったタイトルの一つがOuter Wildsである。そういえば、以前どこかで目にした記憶がある。小さなゲームスタジオが作った、一風変わった宇宙探検のゲーム。これだ、と思った。

世界のデフォルメの仕方、色使い、生き物のデザイン、名前などが、とてもうまく創造されていた。どこか古く懐かしく、穏やかな、可愛らしい世界。この空気感・この世界をウロウロするのが楽しい。こういうものを創るぞ、と考えて創ったというよりは、作者の自分自身の一部を転写するような感じで創られているのではないだろうか。絵を描いたり、見たりして、一人の人が創造できるものの幅は中々狭いと最近思っている。言い換えれば、同じ作家の作品は、どこか何かが共通している。

そして、この小さな世界によくもこれだけの物語を詰め込んだものだ。どこに行っても何かがある。そうやって断片的に浮かび上がる物語が、段々一つに繋がっていく。

ただし、操作方法には非常にイライラした。コントローラのY軸の挙動が、どう設定しても自分の期待通りにならない。上を向きたい時に下を向いてしまうという事を何度も繰り返した。このせいで、何度も死んで時間を無駄にした。宇宙を移動する空間感覚の楽しさの多くが失われた。

宇宙探検ゲームというと、僕にとっての金字塔はKerbal Space Programである。軌道力学、ロケット工学をはじめ、宇宙を飛ぶための基礎的な知的体系については全てKSPで学んだ。この、学ぶという過程に僕は夢中になった。KSPで学んだ事で、現実の宇宙探査の理解がずっと深まった。Outer Wildsには、そういう学びはなかった。

Outer Wildsでは、かつて太陽系に存在した先進的な知的種族の足跡を追う。SF的だ。僕はSFは大好きなのだが、でもこのゲームのSF要素にはあまり興奮しなかった。現実世界の物理法則と出来るだけ整合性を持たせつつ、ルールをちょっとだけいじってみせるのがSFの妙だと思うのだが、そういう妙はなかった。宇宙という舞台を使ってはいるけど、SFというよりはファンタジーというか…。「量子」とか名前をつけているが、雰囲気だけである。ゲームのために、太陽系が非常に狭く小さく創られているのもSF感のなさに貢献しているかもしれない。

面白かった。掛かった時間もお手頃だったし、良いゲームだった。が、他の人の感想をインターネット上で読むと、このゲームに心を大きく震わせた人が、僕より沢山いるようだった。僕の心が、そういう大きな震えをこのゲームから受け取れなかった事が、少し残念に感じられた。

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