運動は得意でないと感じていた中学生の頃、傘を差して下校しようとしていたら、体育会系の高校生の先輩が、ちょっとそこまで買い物に行くから一緒に傘に入れろと言いながらするっと入ってきた。怖い人だったらどうしようと思い、大人しく言われるがままにした。部活は何だ、パソコン同好会です、運動しないのか、運動神経無いんで、みたいな話をしたら、運動神経なんてものはない、やれば誰でも出来るぞ、やるかやらないかの違いだけだと言われたのが強く印象に残った。なるほど、やらないで出来ないと決めてしまうほど馬鹿なことはないし、努力を積み重ねてようやく出来るようになった事を運動神経のおかげにしては努力している人に失礼だ。
あれから30年ほど経ったこの1月、自転車に乗りまくった。1400kmを走破し、10,000mの標高差を登った。一日当たりに換算すると、45kmと333m。途方もない数字だ。12月に雨が多かった反動かもしれないし、気温が上がって外が快適になったからかもしれないし、あるいは使っているアプリが1250kmというマイルストーンに人参をぶら下げてきたからかもしれない。といっても「トロフィー」と称するただのデジタルステッカーなのだが。人の動機を操るのがこんなに簡単でいいのだろうか。
毎週末、120km超の長距離ライドに出掛けた。疫病の波が来ているので、家族から出先で飲食してはいけないと言われており、その楽しみが奪われたのは残念だが、重い一眼レフは持ち歩いて写真は撮っている。野生動物や家畜にもたくさん遭遇するのも楽しい。
食欲もとても増した。成長期だった時よりも食べているのではないか。それに加えて、長距離ライドの時は、食べ物を持ち歩いて、ひっきりなしに何かを食べている。人体の事を機械のように捉えるもおかしいが、食べないと漕げない。実に単純な話だ。
酸素も同じだ。筋力がついたので、体調とメンタルが良ければ急な上り坂でもかなりの力で数分間は漕げるようになった。この時の酸素消費量に肺機能が追いついていないからだと思うのだが、数分すると体がチリチリするような感覚がしてくる。
一時間ライドの平均時速も遂に30km/hを達成する事が出来た。信号の神様のお陰もあるが、自分にとっては大きな節目だ。全てのライドを含めた平均時速は大体25km/h位で、これも半年前は23km/h位だから改善した。食べているお陰で、体重も同じ期間に1kg微増した。太腿だけはだいぶ頼もしい感じになった。長距離ライドの翌日の疲労も以前より心なしか軽い気がする。数字を見ると少しずつ確実に成長しているのが分かる。
あの時の高校生の言うとおりだった。やれば出来るもんだ。