海外の会社にリモートワークで働く

投稿日:

今日、こんな記事を目にした。

僕は日本とアメリカのソフトウェア産業に橋を架けたいと思っているので、筆を執らずにはいられないテーマだ。給料の高い英語圏の会社の仕事をした方が有利だ、という趣旨の記事である。その通りだ。もっと多くの人にこの道を進んでほしいと思う。

給料の高いのは何故かというと、アメリカとヨーロッパのソフトウェア産業は一つの巨大な経済圏を形成していて、この経済圏にソフトウェアを売っている会社は、技術者の書いた一行のコードからより多くの収益を得られるから。ソフトウェアはスケール産業だから、同じソフトウェアをどれだけ多くのお客に売れるかで同じコードの価値が10倍位変わる事になるのだ。

日本でオフィスに勤務して仕事している技術者にとっては、海を超えて海外の会社で働く、という姿がイメージできない人も多いかも知れない。でも、安心してほしい。こっちの会社ではリモートワークという形態はずっとありふれている。何しろ、アメリカ国内だって相当な広さだし、大都市は技術者の値段が高すぎるので、ここ20年位、アメリカ国内の地方都市に住んでいる人をどんどん採用して…という流れが続いているのだ。

最初からリモートワーク前提だと、働き方や組織の作り方が全然違うものになる。前職のCloudBeesでは最初の10人のうち、どの二人として50km以内には住んでいなかった。社長はスイスに住んでいたし、エンジニアはボストンにもオースチンにもサンノゼにもいたし、オーストラリアに住んでいる人とニュージーランドに住んでいる人もいた。かつての大英帝国のごとく、24時間誰かが常に働いている状態だった。

表紙の写真は、アメリカ人とケニヤ人とフランス人と日本人だ。生まれた国に住んでいる人は一人だけ。

今の会社Launchableでは、その時の経験と学びを活かして、更にremote firstの文化を作った。この話はこないだデブサミでしてきたので、資料とか録画がそのうち公開されるはずだし、それまでは高野さんの素晴らしいまとめをみてほしい

元記事にもあるが、世界の色々なバックグラウンドを持った人達と仕事するのはとても楽しい。自分の世界が広がる感覚。

一方で、現実的な難しさも色々ある。雇う側としては、「世界中どこから応募してもらっても構わない」とはならない。国によって法律も税制も制度も違うから、どうしたって一定の規模で人が雇えるという期待や、今まで経験してやり方を知っているところじゃないと、直接雇用しづらくなる。国毎の違いが、日本の技術者を低い賃金の労働市場に閉じ込めているのだ。とても残念だ。

Launchableでは結局日本に子会社を作った。弁護士も会計士も英語が出来る人がほとんどいないので、費用も掛かるし、僕自身が通訳したり翻訳しないといけない事も沢山あった。会計ソフトウェアのfreeeに至っては英語で財務諸表を出力することすら出来ないので、日本語のものから毎月米国本社と連結決算するための英語のスプレッドシートを出力する仕組みまで作った。銀行口座を作るのだって一苦労。経営者が僕だったから出来たけど、日本人が役員にいない会社にはとても無理だ。freeeとか企業を支える士業の人達は本当に頑張ってほしい。あなた達が頑張れば日本はもっと経済的に世界と繋がれますよ!!

だから、雇われる側としては現実的な選択肢はフリーランスだと思う。これなら雇う側にとってはずっと楽。会社勤めをしている時には考えないで済んだ色々な事をやらないといけないけど、フリーランスという働き方を既に日本で選んでいる人だっていっぱいいるはずなので、そんなに難しいことではないはずだ。

そして、こういう茨の道は、より多くの人が歩んで道を太くしていくことでしか解決しないのだ。だから、Launchableみたいに日本の技術者を採用しようとしているところに力を貸してほしい。一緒に世界をギャフンと言わせる製品を作って、一緒に働いているこっちの同僚に、投資家に、お客に、日本にも層の厚い技術者コミュニティがあるんだという事を実感させたい。そういう人が、次の職場で、周りの人の意見をちょっとずつ動かしていく。海を越える人のネットワークが太くなっていく。

別な種類の茨もある。すなわち、言葉と時差。

言葉は間違いなくハンデだ。ソフトウェアづくりは昔よりずっとチームワーク。Product managementやdesignやsalesやmarketingの人達とやり取りする機会もずっと増えた。技術のことなら英語で喋れてまず一歩、技術の外の人達と喋れて次のレベルだ。自分の気持ちを伝えたり、議論をしたり、うまく話を持っていったり出来ると出来ないとでは評価も大違いだ。技術の経験は同じでも、これの違いでやはり給料が下がってしまう。

この点、日本語は英語と距離がありすぎるから、日本で生まれ育った人はもうそれだけで結構なハンデを背負っている。学校で今まで何時間英語を習うのに費やしたか。こっちの人はこっちに生まれたというだけで、あの時間を丸々別な事に使えるのだ。信じられますか!!

でも、言葉は、使えば使うほど自然と上手くなっていく。英語で仕事する環境に一旦入ったら、もうそれだけでだんだん英語が自然に使えるようになるという好循環が起きる。僕もそのおかげで20年経った今何とかなるようになった。

そして、時差。リモートワーク前提の会社だからって、ミーティングはゼロにはならない。ヨーロッパとアメリカと日本はそれぞれ大体8時間差で世界を三等分しているから、アメリカとヨーロッパにまたがる時差に慣れている「だけ」の会社だと、この新しい凶悪なタイムゾーンに対応できない。この難しさと、得られる利得を秤に掛けて否定的な結論を出す会社も多い。

これも、やはりより多くの人が歩むことによって道を太くしていくしかない。大英帝国のような小さな会社にはそれなりの働き方があるのだ。そして、天秤が傾き始めたら、こっちのより多くの会社にそういうノウハウが広まっていく。日本から世界の会社ではたらくのがどんどん楽になっていく。だから、未来のために、今天秤のこっち側に重りを乗っけられる人は手伝ってほしい。

一つのブログに全部書ききれる内容じゃないので、今日はこのくらいにしておこう。最後にもう一言だけ。

茨の道、茨の道、と書いた。でも、変化の時はチャンスでもある。オフィスに朝行って夜遅くまで仕事して帰ってくる、そういう働き方が出来ないで労働市場から閉め出されている人達がいる。女性。地方在住者。最近、リモート前提の会社では必ずしもフルタイム労働にこだわる必要はないのではないかと思い始めている。週20時間労働で給料が半分ならその方がいいという人達もいるのではないか?そういう人達と繋がってさらなる成功事例を作りたい。

僕もこれからも頑張るので、よろしくお願いします!

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です